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【展覧会】ピカソやポップ・アートの名品が一堂に揃う展覧会「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」が京都国立近代美術館にて2023年1月22日まで開催中

【展覧会】ピカソやポップ・アートの名品が一堂に揃う展覧会「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」が京都国立近代美術館にて2023年1月22日まで開催中

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アート新情報では、日本全国で開催されている展覧会やアートイベントのみどころや開催期間・会場・巡回展などの情報をまとめました。

ピカソやポップ・アートの名品が一堂に揃う展覧会「ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション」が京都国立近代美術館にて2023年1月22日まで開催中。本展のみどころや開催概要などをご紹介します。

※以下、画像と展覧会説明はプレスリリースから引用

開催主旨 About This Exhibition

本展は、ドイツのルートヴィヒ美術館が所蔵する、20世紀初頭から現代までの優れた美術作品を、寄贈に関わったコレクターたちに焦点を当てて紹介する展覧会です。

館名に名を冠するルートヴィヒ夫妻が寄贈した、ヨーロッパ随一の優れたポップ・アートのコレクションやロシア・アヴァンギャルドの貴重な作品群に、ピカソやドイツ近代美術の名品など、絵画、彫刻、写真、映像を含む代表作152点※を紹介します。

世界で3本の指に入るピカソのコレクションから《アーティチョークを持つ女》や、ピカソと同時代にパリで活躍したマティスやモディリアーニ、ロシア・アヴァンギャルドのマレーヴィチ、ポップ・アートを代表するウォーホルやリキテンスタインなどの作品が一堂に会します。

美術館と市民の生きた交流の証しとしての本展が、私たちの社会における美術館の意義と役割を見つめなおす契機になれば幸いです。
※一部東京会場のみでの展示作品があります。

みどころ Highlights

01.未来を買ったコレクターたち

ルートヴィヒ美術館のコレクション形成に寄与したのは市民コレクターたちでした。文化・芸術を愛し守り、次世代に継承しようとしたコレクターたちの未来への想いは、ルートヴィヒ美術館のコレクションや芸術活動の礎にもなっています。

美術と社会のゆるぎない結びつきは、日本に生きる現在の私たちにとって示唆にあふれています。

02.美術史をたどる、100年の多様な表現

ドイツ表現主義、新即物主義、キュビスム、ロシア・アヴァンギャルド、バウハウス、シュルレアリスム、ピカソやポップ・アート、前衛芸術から抽象美術、そして2000年代以降の美術まで、20世紀初頭から今日までの多様な表現をご紹介します。

また、それぞれのセクションに挿入された写真コレクションは、時代の精神を生き生きと伝えています。女性作家たちのきらりと輝く表現にも注目ください。

03.時代が息づく珠玉の152点※

20世紀前半のふたつの世界大戦と戦後の復興、東西の統一を経て、現在ではヨーロッパを牽引する国のひとつとなったドイツ。美術を通じて歴史が分かり、歴史のなかに美術が見えてくる展覧会です。人間と社会、そして歴史に迫る珠玉の152点※をお楽しみください。
※一部東京会場のみでの展示作品があります。

ルートヴィヒ美術館とは Museum Ludwig, Cologne

ルートヴィヒ美術館外観

ルートヴィヒ美術館外観
Museum Ludwig, Köln / Cologne © A.R.

ルートヴィヒ美術館は、ドイツ第4の都市であるケルン市が運営する、20世紀から現代までの美術作品を収集・紹介する美術館です。

古来、ライン河沿いの交通の要衝として発展してきたケルンは、世界最大のゴシック建築であるケルン大聖堂、ヨーロッパ最古の大学の一つであるケルン大学ほか、数多くの美術館、博物館を擁する文化の薫り高い古都です。

ルートヴィヒ美術館は、ケルン大聖堂にも隣接したライン河畔に、1986年に開館しました。その構想は、美術コレクターとして名高いペーター&イレーネ・ルートヴィヒがケルン市に約350点の作品を寄贈した1976年に遡ります。

また、同じくケルン市立のヴァルラフ=リヒャルツ美術館からは、ケルンの弁護士、ヨーゼフ・ハウプリヒが1946年に寄贈したドイツ近代美術のコレクションを含む1900年以降の作品が移管され、ルートヴィヒ美術館の基盤が整えられました。

今日、ルートヴィヒ美術館は、ヨーロッパで最大級のポップ・アートのコレクション、表現主義や新即物主義などのドイツ近代美術とその同時代のロシア・アヴァンギャルド、世界で3本の指に入るピカソのコレクションや、写真史を網羅する質量ともに優れた写真コレクション、そして世界各地の現代美術の収集により、国際的にも高く評価されています。

ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会

ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会は、現代美術を振興し、美術館の活動に主体的に関わることを目的に、1985年にラインラント地方のコレクターが集まって設立した会員制の組織である。

現在約650人の会員は、経済や学術、芸術など、さまざまな分野と世代にわたり、2018年には、アメリカに国際支部も設立された。協会の活動範囲は広く、作品の購入や展覧会の開催を支援するほか、出版やさまざまなプログラムやイベントも実施している。

なかでも、ケルンのコレクターでヴァルラフ=リヒャルツ美術館の修復家だった人物の名を冠す、優れた現代作家を顕彰する「ヴォルフガング・ハーン賞」は、1994年より毎年続く協会の主要なプロジェクトである。

受賞作家の作品は美術館に収蔵され、展覧会も開催される。また、2005年に若手会員の発案で開始された「ユンガー・アンカウフ」は、ルートヴィヒ美術館の館長や学芸員と協力し、新進気鋭の作家の作品を購入するユニークな事業である。

序章 Introduction: Museum Ludwig and its Supporters

ルートヴィヒ美術館とその支援者たち

ルートヴィヒ美術館の大きな特徴は、20世紀美術の軌跡を辿り、21世紀以降の動向をも視野に入れたコレクションの形成が、市民たちの関与に支えられている点にある。ここではまず、ルートヴィヒ美術館の設立そしてそのコレクションの発展において、重要な役割を果たしたコレクターたちを紹介する。

美術館が所蔵するドイツを中心とした近代美術作品の多くは、1946年にケルン市に寄贈されたヨーゼフ・ハウプリヒのコレクションと、その後彼が設立した基金によって購入された作品に由来する。

美術館とハウプリヒの目的は、ナチ・ドイツ時代に「退廃芸術」として公共の場から駆逐されたドイツ表現主義をはじめとする近代美術の復権とそのコレクションの再建にあった。

1957年には、ゲオルク&リリー・フォン・シュニッツラー夫妻(1884-1962/1889-1981)が収集した画家マックス・ベックマンの作品群が、そして1958年には、ピカソやマティス、ココシュカやクレーなど近代美術の重要作品を含む、ヴィルヘルム・シュトレッカー(1884-1958)のコレクションが収蔵されて、更なる充実化が図られた。

1976年、ドイツ表現主義と同時期に展開したロシア・アヴァンギャルドの優れた作品群を美術館にもたらしたのは、ペーター&イレーネ・ルートヴィヒ夫妻だった。彼らは同時にポップ・アートの包括的コレクションを寄贈し、それによってルートヴィヒ美術館開設のみならず、美術館における1960年代以降の同時代美術の収集という契機をもたらした。

同じ年、画家エルンスト・ヴィルヘルム・ナイの支援者として知られていたギュンター&カローラ・パイル夫妻(1908-1974/1907-1992)も、所蔵する数多くのナイ作品のほか、エルンストを含む近代美術作品群を寄贈した。

さらに1977年には、写真芸術発展の支援者でありコレクターであったレオ・フリッツ&レナーテ・グルーバー夫妻(1908-2005/1936- )のコレクションが収蔵され、ルートヴィヒ美術館写真・映像部門の礎となった。重要なのは、彼らの美術館に対する支援が、ハウプリヒ同様、一過性ではなく継続的なものであったことだ。その意味で、ルートヴィヒ美術館は、まさに市民が創ったコレクションなのである。

1章 German Modernism – Looking for the New Artistic Expression

ドイツ・モダニズム ―― 新たな芸術表現を求めて

ワシリー・カンディンスキー《白いストローク》 1920年

【1-1】ワシリー・カンディンスキー《白いストローク》 1920年 油彩/カンヴァス 98.0 × 80.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 10003. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d056273_01)

エルンスト・バルラハ《うずくまる老女》 1933年

【1-2】エルンスト・バルラハ《うずくまる老女》 1933年 木 56.0(高さ)× 33.0 × 30.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 76/SK 0047. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c005052)

19世紀から20世紀初めにかけてのドイツでは、新たな芸術表現を模索する芸術家グループが生まれ、彼らを支える画廊の活動が活発化した。中でも、1905年にドレスデンで結成された「ブリュッケ(橋)」と1912年にミュンヘンで誕生した「青騎士」は、新時代の芸術傾向を提示した点で重要である。

ともに19世紀的な写実主義や印象派的な光学的視覚表現を脱しようとした点は同じだが、前者は、人間がもつ根源的かつ原始的な生命力を激しい筆致と鮮烈な色彩で表現しようとし、後者は、あらゆる芸術に通底する共通項を模索し、その過程で西洋的で因習的な造形表現の超過を試みて、一部は非具象的傾向を強めた。

ヘッケル《森の中の情景》とカンディンスキー《白いストローク》(図1-1)は、この二つの動向をよく表す作品である。彼らの作品や前衛的芸術動向は、主に同時代美術を扱う画廊を通じて拡がっていった。その代表的存在が、ヘルヴァルト・ヴァルデンが運営していたベルリンのシュトゥルム画廊である。

ヨーゼフ・ハウプリヒは、ミュンヘンとベルリンでの法学生時代に、両都市の活発な芸術シーンに触れて関心を高め、ヴァルデンのもとでヴィルヘルム・レームブルックの彫刻を購入することから近代美術のコレクションを始めた。

彼が最初に収集対象としたのは、ブリュッケの作家たちと、社会存在としての人間を虚飾なく描き出そうとする「新即物主義(ノイエ・ザハリヒカイト)」の画家たちの作品だった。

本展には、その代表作のひとつ、ネーデルラント絵画研究を専門とする美術史家エドゥアルト・プリーチュを描いたグロスの作品が出展される。本作品は、ナチ時代に「退廃芸術」としてドレスデンの美術館から接収され、戦後にハウプリヒが設立した基金によって買い戻された作品でもある。

そのほか、ここでは彼のもうひとつの収集対象であったラインラント地方の画家たち、そしてバルラハをはじめとする彫刻家たちの作品も紹介する(図1-2)。

20世紀は写真・映像の時代でもあり、ルートヴィヒ美術館は開館直後からコレクションにおける写真作品の充実化を図った。

写真芸術の黎明期においては、例えばデュールコープ作品のように絵画や版画にその構成の範をとったピクトリアリズムが主流であったが、写真とは何かを考える過程で、バイヤー《メタモルフォーゼ》を一例として、被写体との関係性や独自の構図に時間感覚、さらには写真技法・素材そのものに注目した作品が登場してきた。1900年頃から1940年頃にかけての写真芸術の変遷も本章で紹介する。

ルートヴィヒ美術館の写真コレクションについて

ルートヴィヒ美術館は、写真が誕生した19世紀前半から現代までの写真史を網羅する、約70,000点にも及ぶヨーロッパ屈指のコレクションを所蔵する。その礎となったのは、1977年に初めて収蔵され、その後も寄贈と購入が続いたレオ・フリッツ&レナーテ・グルーバーのコレクションだった。

グルーバーは、写真と映像に関する世界有数の見本市「フォトキナ」で1980年まで写真展を企画し、親しい友人のマン・レイをはじめ、国内外の多くの写真家と交流した人物である。また、ダゲレオタイプなど19世紀の貴重な写真作品を含む「アグファ・フォト・ヒストラマ」の存在も忘れてはならない。

このコレクションは、ドイツの光学機器、写真フィルムの製造企業として知られたアグファが、科学者で写真史家のエーリヒ・シュテンガー(1878-1957)の個人コレクションを1955年に購入したことに始まる。

アグファが拡大した約13,000点のコレクションは、1985年にケルン市に貸与され、1986年に開館した新館の一角に場所を得て公開された。2005年には競売にかけられて散逸の危機に陥ったが、ルートヴィヒ美術館に購入されて現在にいたっている。

2章 Russian Avant-garde – Revolutionary Innovation in the Arts

ロシア・アヴァンギャルド―― 芸術における革命的革新

カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》 1916年

【2-1】 カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》 1916年 油彩/カンヴァス 102.5 × 67.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01294. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d033965_01)

アレクサンドル・ロトチェンコ《ライカを持つ少女》 1934年

【2-2】 アレクサンドル・ロトチェンコ《ライカを持つ少女》 1934年(プリント:1934年以降) ゼラチン・シルバー・プリント 40.0 × 29.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML/F 1978/1072. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c009362)

ドイツで表現主義が拡がりを見せていた同じ頃、ロシアでも社会の大変革と連動し芸術における新たなうねりが生まれていた。1917年の社会主義革命によって帝政が倒れると、ロシア・アヴァンギャルドと呼ばれる芸術実践や理論における抜本的な革新運動は加速した。

ミハイル・ラリオーノフは「レイヨニスム」を提唱して、人間の色彩感覚や視覚そのものを左右する光線に注目して線・リズム・色彩を絵画画面において綜合しようとし、マレーヴィチは「スプレマティズム」を提唱して、絵画を現実との対応関係から切り離し、円や正方形といった基本的造形要素のみで構成する絶対的に自律した無対象絵画を生み出した(図2-1)。

一方、あたかもイコンのような趣を見せるゴンチャローワ《オレンジ売り》に見られるように、彼らはロシアの民衆たちに根ざした文化を積極的に参照した。

さらに新たな社会と芸術を標榜する彼らが、その理念の伝達手段として注目したメディアが写真であった。ここでは、日々の生活のあらゆるものを独自の構成主義的視線でとらえたロトチェンコ(図2-2)や、社会主義理念を映し出すゼルマらの作品も紹介する。「世界芸術」を構想し、冷戦期を生きたルートヴィヒ夫妻にとって、社会主義を背景とした芸術も重要な収集対象であった。

夫妻のロシア・アヴァンギャルドのコレクションは、1976年の構想時、さらにはイレーネ没後の2011年に寄贈・遺贈され、それによってルートヴィヒ美術館は、ロシア以外で最も包括的なロシア・アヴァンギャルドのコレクションを持つに至っている。

3章 Pablo Picasso and His Environment – Liberation in Color and Form

ピカソとその周辺―― 色と形の解放

ペーター・ルートヴィヒは、1950年に「同世代の人々の人生観の表れとしてのピカソの人物画」と題した論文で博士号を取得した。

しかし、ペーターそして妻イレーネがピカソの実作品を目にしたのは1955年にケルンで開催された大回顧展であり、これを機に夫妻はピカソ作品の収集を開始した。二人にとってピカソは、戦時下の精神的不安感が伝わる《アーティチョークを持つ女》に見られるように、キュビスムに代表される革新的な創造行為で生の軌跡を全人的に表現する芸術家であり、自らの時代を象徴する存在だった。

そのため夫妻の収集対象は、ピカソの全時代全ジャンルにおよび、なかでも特に当時はまだ評価の定まらなかった晩年の作品を、精神の自由で伸びやかな表現として高く評価し数多くコレクションしている。

生命力に溢れた肢体が印象的な《眠る女》はその代表例である。夫妻のコレクションのうち90点の作品が1994年に寄贈され、同年寄託となった774点の作品は2001年に寄贈された。

ここでは、ルートヴィヒ美術館のピカソ・コレクションから各時代を代表する作品とともに、パリで活動したピカソと同時代の作家たちの作品も紹介する。

その中の何点かは、ハウプリヒ旧蔵のヴラマンク《花と果物のある静物》のように20世紀の早い時期にドイツで公開・収蔵されたものである。また、同時期にレイヨグラフやソラリゼーションといった新たな写真芸術の手法を開発したマン・レイの作品も併せて紹介する。

4章 From Surreal Creation to Abstraction – Postwar Movements in Europe and America

シュルレアリスムから抽象へ――大戦後のヨーロッパとアメリカ

ヴォルス《タペストリー》 1949年

【4-1】ヴォルス《タペストリー》 1949年 油彩/カンヴァス 54.0 × 73.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01167. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, Peter Kunz, rba_d032855_01)

第二次世界大戦後まもないヨーロッパでは、フランスを中心に、アンフォルメル(非定形)と呼ばれる絵画が隆盛した。混沌としたイメージや絵具の物質性を強調した画面は、戦争によって破壊された人間の生の回復を志向する潜在的な可能性と強靭さに満ちていた。

アンフォルメルの先駆者のひとりでドイツ出身のヴォルスは、戦前にパリでシュルレアリスム運動に接近し、戦中は敵国人として収容所に送られた。1946年に再開した油彩画は、《タペストリー》(図4-1)が示すように、小さな生命体を思わせるユーモラスで繊細な有機的形態で満たされている。

アンフォルメルがヨーロッパを席捲した頃、アメリカでは抽象表現主義が花開いていた。その勃興に大きく寄与したのが、アンドレ・ブルトンやエルンストなど、1940年代初めに戦争を逃れてヨーロッパからアメリカに亡命し、人間の無意識や偶然の豊かな発露を伝えたシュルレアリストたちだった。

エルンストのアメリカ時代に由来する《喜劇の誕生》は、この頃に画家が集中して取り組んだ仮面を描いたアイロニカルな作品である。オランダ出身のデ・クーニングは、ジャクソン・ポロックと並ぶ抽象表現主義の代表的な画家である。《無題 VII》は、具象と抽象の間を行き来した画家が、その画業の後期に到達した自由で軽やかな様式を示す。

写真コレクションからは、シュタイナートが1951年に提唱した「主観的写真」に属する実験的な作品が出品される。

5章 Pop Art and Everyday Reality

ポップ・アートと日常のリアリティ

戦後の旧西ドイツでは、経済の奇跡と呼ばれた急速な経済成長を背景に新しい美術が流入し、1968年のドクメンタ4では、今や現代美術の中心地となったアメリカのポップ・アートやミニマリズムが大きな話題を呼んだ。

1960年代前半には古代や中世の美術のコレクターだったルートヴィヒ夫妻は、その後次第に、地元アーヘンにも流れ込んできた現代美術に通じていった。1967年にはニューヨークを訪れて新しい潮流に触れ、1968年には、新しく集め始めたポップ・アートをアーヘンのズュールモント美術館で公開した。

短期間に爆発的な勢いで作品を収集した夫妻は、1969年、ケルンのヴァルラフ=リヒャルツ美術館で「1960年代の美術」展としてその優れたコレクションを公開し、高い注目を浴びた。

1950年代にイギリスで始まり、アメリカで隆盛したポップ・アートは、大量消費を前提とした大衆文化を批評すると同時に、美術とは何かを問うた動向である。ジョーンズは、旗や標的、数字などの日常的な記号やモティーフをエンコースティック(蝋画)という古典的な絵画技法で描き、イメージとオブジェの境界を揺さぶった。

リキテンスタインの《タッカ、タッカ》は、引用したマンガのマンガとしての体裁を保持しつつ、絵画としても成立するよう改変している。ウォーホルは、だれもが知る時代のアイコンを取り上げ、スターであることとイメージの大量消費の相関を問うた。写真コレクションからは、1960、70年代のアメリカ社会の現実を写し取ったウィノグランドのシリーズ〈女たちは美しい〉を取り上げる。

6章 Aspects of Avant-garde Art in the 1960s

前衛芸術の諸相――1960年代を中心に

モーリス・ルイス《夜明けの柱》 1961年

【6-1】モーリス・ルイス《夜明けの柱》 1961年 アクリル絵具/カンヴァス 220.0 × 122.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01091. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d040139)

ルートヴィヒ夫妻は、ポップ・アート以外にも、前衛的、抽象的な作品を数多く収集した。「1960年代の美術」展でも、観者の網膜上の知覚作用を巧みに取り込んだオプ・アートや、逆に、イリュージョンを極限まで排したミニマリズムなど、1960年代の重要な動向が押さえられていた。6章では、還元的でシンプルな形態に向かいつつも、固有の展開を遂げた芸術の諸相を紹介する。

バウハウスで教鞭をとったアルバースは、1933年、ナチ党に同校を閉鎖されてアメリカに亡命した。色彩の相互作用と視覚的効果を探究したシリーズ〈正方形へのオマージュ〉は、オプ・アートの展開に大きく寄与した。

戦後アメリカで起こったカラー・フィールド・ペインティングは、筆致や物質性を排した大きな色面構成を特徴とする。その代表的な画家であるルイスは、素地のカンヴァスに直接絵具を滲み込ませるステイニングという技法により、純化された色彩のイリュージョンを探求した(図6-1)。

1950年代後半からデュッセルドルフを拠点に活躍した前衛グループ「ゼロ」は、造形作品はもとより、パフォーマンスや出版、国際的な展覧会の企画など多彩な活動を行った。ゼロが好んだ反復する構造は、素材の効果ともあいまって運動や光の感覚を呼び起こす。

ヨーゼフ・ボイスの愛弟子として知られるパレルモは、1970年代より、アルミ板に色を塗った金属絵画において発色や色の組み合わせを探究し、変化に富んだインスタレーション風の展示を試みた。

7章 Expanding the Frame of Art from the 1970s to Today

拡張する美術――1970年代から今日まで

第7章では、旧東西ドイツの美術の交流や、現代美術の購入と振興をめぐるルートヴィヒ美術館の活動なども参照しつつ、映像やパフォーマンスなど多様に展開した現代美術の諸相を紹介する。

ボイスは、社会と芸術をつなぐ「社会彫刻」を提唱し、デュッセルドルフ芸術アカデミーでは多くの後進も育てた。本章では、神話に基づく彫刻が出品される。戦後まもなく西側に移った旧東ドイツ出身のバゼリッツは、1960年代、国の分断によるアイデンティティの喪失を思わせる、荒野に立つ無防備で傷ついた兵士や羊飼いを描いた。

《鞭を持つ女》ではそれが女性に変わり、痛みを与える鞭を手にする。冷戦時代にルートヴィヒ夫妻は、コレクションを旧東ドイツに貸与して展示したり、東側の作品を購入したりするなど、東西ドイツの架橋に尽力した。

旧東のライプツィヒ派の画家で、閉塞的な社会状況を象徴的に描いたマットホイアーの《今度は何》も夫妻の購入による。

今日ルートヴィヒ美術館は、個人コレクター以外にも、さまざまな形で市民の支援を受けている。1985年に設立された会員制の独立した組織、ルートヴィヒ美術館ケルン現代美術協会は、作品の購入や、展覧会の開催や出版を支援している。

キッペンベルガーの《無題、シリーズ〈戦争悪〉より》は、この協会の協力で所蔵された。また本章では、優れた現代作家を顕彰する「ヴォルフガング・ハーン賞」(1994年~)や、若手作家の作品を購入する「ユンガー・アンカウフ」(2005年~)など、協会のユニークな活動を通じて所蔵された2000年代以降の作品も出品される。

「ルートヴィヒ美術館展」開催概要

展覧会名 ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション
会期 2022年10月14日(金)〜2023年1月22日(日)
時間 10:00〜18:00、毎週金曜日は20:00まで
※それぞれ入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日、12月29日~1月3日
※ただし、12月26日と1月9日は開館
会場 京都国立近代美術館
住所 京都市左京区岡崎円勝寺町
アクセス
入場料 一般/2,000円(1,800円)
大学生/1,100円(900円)
高校生/600円(400円)

※価格は全て税込み。
※( )内は20名以上の団体料金。
※中学生以下は無料
※心身に障がいのある方と付添者1名は無料*。
※母子家庭・父子家庭の世帯員の方は無料*。
*入館の際に証明できるものをご提示ください
※本料金でコレクション展もご覧いただけます。
チケット購入先 オンラインチケット
チケットぴあ(Pコード:686-187)ローソンチケット(Lコード:52562)セブンチケット(セブンコード:096-665)イープラスほか主要プレイガイドやコンビニエンスストアなど(チケット購入時に手数料がかかる場合があります)
公式サイト ルートヴィヒ美術館展 公式サイト
美術館公式サイト 京都国立近代美術館 公式サイト
SNS一覧
主催 京都国立近代美術館、ルートヴィヒ美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪、BS-TBS、京都新聞
後援 ドイツ連邦共和国総領事館
協賛 岩谷産業、損保ジャパン、ダイキン工業、竹中工務店、三井不動産
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この記事を書いた人
Takenaka Kenji

著者名:Takenaka Kenji

デザイン事務所playpark代表、クリエイティブディレクター・Webディレクター・イラストレーター。 趣味は、美術館・展覧会・仏像巡り。 目標:全国の美術館を制覇する事。

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